コロナ禍でここ数年開催予定だったイベントは中止されていましたが、3年ぶりに行動制限がなかった今年の夏、8月14日(日)、静岡県富士スピードウェイにて開催された「Fuji-1 GP 4時間耐久レース」にて、GRANVALLEY Racingとして出場を果たしました。
Fuji-1 GP 4時間耐久レースとは
Fuji-1 GP 4時間耐久レースは、モータースポーツ・ファンが集い、仲間と共に走り抜く大人のための耐久レースです。参加車両は馬力と過給器の有無で8つのクラスに分け、クラスごとに勝敗を決めます。また、このレースは規定時間の中、すべての車両が一つのコースで混走するため、ポルシェ911やAudi R8などの大排気量スポーツカーから、トヨタ ヴィッツ、日産マーチなどの低排気量車両までが同じコースで競い合います。そのため、性能差によりスピード格差が生まれる特徴があり SUPER GTに近いレースとなっています。
もう一つの特徴は、運転免許所有であればレースに参加できる点です。JAF公認レースで必須のモータースポーツライセンスが不要のため、誰もが耐久レースを体験することができます。
今回のエントリーは55チーム。車両にとって過酷な耐久レースのため、車両をいたわりながら安心・安全に4時間先のゴールを目指します。
GRANVALLEY Racing として2台の車両でエントリー
今回、スーパー耐久、SUPER GT、TCR Japan等のレースで活躍をしており、弊社もデータ分析パートナーとして支援する「Hitotsuyama Racing」の協力を得て、2台で本レースにエントリーしました。1台目はAudi R8 LMS GT3。排気量 5.2L 585馬力を出すV10エンジンを搭載したFIA GT3規制に準拠したレーシングマシンです。2台目はAudi A1 fun Cup仕様。一般車両をワンメイクレース用に改造した1.4L 150馬力のレーシングカーです。
私たちの目標は、「車両を壊さず安全に完走する」 ことです。
ここでドライバーを紹介します。Audi R8 LMS GT3を操るのは、レース経験豊富な弊社代表「大谷」とその友人数名。メンバー全員がレース経験者です。そして、Audi A1を操るのはグランバレイでレース分析チームのメンバー2名です。数々のレース分析に携わったエンジニアでモータースポーツライセンスを保持しJAF公認レースにも参戦する「河村」がAドライバー、数多くのレース現場を経験しているがレース走行には全くの素人である「山内」がBドライバーとして参戦しました。
今回のレポートは、このAudi A1で参戦する2名にフォーカスしてお届けします。
午前中の走行枠:滑りやすいレインコンディションを体験
午前中は、前日の台風を引きずり小雨模様。30分、2枠がある練習を兼ねた走行枠では、各人で一枠づつ使い走行することにしました。まずはBドライバーの私から。私自身、今までレースの経験は2回しかなく、ウェットコンディションの経験はありません。ピットロードから徐々に速度を上げて、第一コーナー手前で、いつも通りのブレーキング。「おぉ、滑る」、ハンドルが大きくブレ、車両姿勢が不安定に。いきなりレインコンディションの洗礼を受けました。ここは安全第一に落ち着いて走行。他車も同様に路面状況の把握と車両の挙動を確認しながら走行しています。しかしながら、目の前でスピンをする後輪駆動の車両があるなど、レインコンディションでの駆動方式の違いを目の当たりにしました練習走行でした。11周で私の番は終了。
すでに雨がやんでドライになりつつある路面コンディションでAドライバーに交代しスタート。河村はA1 fun Cup出場経験があるためAudi A1の特性を熟知しています。数周は、肩慣らしとして2分20秒前後で走行。ドライになった路面コンディションに対して、マシンの感触を確かめながら、14周で練習走行を終えます。
予選:2分18秒137でクラス8位確保
路面コンディションがドライのまま予選を迎えます。少しでも上位のグリッドを確保するため、Aドライバーで予選に挑みました。予選、決勝と同じタイヤを使用することを聞き、グリップ確保を目的にタイヤを温存する戦略に切り替えました。予選は、最小限の5周以内でアタックすることにしました。結果は、私たちA1チームでは、2分18秒137でクラス8位確保。決勝では総合45番グリッドを獲得しました。さらにAudi R8 LMS GT3チームでは、総合2番グリッドと上位の好位置を得ました。さすがです。
決勝:ノートラブルで4時間を完走
私たちのチームは2名しかいないため、ドライバーの体力と燃費を考慮し1スティント40分、5回交代の戦略で決勝に挑みました。スタートはAドライバー。午後1時ちょうどにグリッドから一斉にスタート。Aドライバーは、1周2分20秒前後で周回を重ねます。スタートして28分後。他車両のスピンの影響で、セーフティーカーが導入され全車スローダウン。その間にドライバーチェンジ。Bドライバーがピットアウトしました。そして44分後レースは再開。1周2分45秒前後で緊張しながら走っていましたが、周回数を重ねていくと心地よい緊張感に包まれながら走る楽しさが生まれ、予定より長い50分間走ることに。その後もセーフティーカーが2回導入され、想定より燃料消費が少なく済んだので、交代回数を1回減らす戦略に切り替えます。そして無事17時にチェッカーフラグが振られゴール。他車との接触もなくノートラブルで、安全な形でレースを終えることができました。
リザルト
N0.43 GRANVALLEY Racing Audi R8 LMS
RACINGクラス 3位 LAP: 106周 Total Time: 4:02‘08.061 ベストラップ: 1’49.065
No.104 GRANVALLEY Racing Audi A1
TCクラス 12位 LAP: 86周 Total Time: 4:03‘03.278 ベストラップ: 2’19.288
参戦して得たもの:安全に完走するための3つの意識
「安全に完走する」。言葉にすると簡単にできそうな感じを受けますが、実は非常に難しいのが現実です。たとえ自分だけ気をつけていても、アクシデントは突然やってきます。今回も、目の前でオーバースピードのため、スピンしスポンジバリアに衝突する車両を目の当たりにしたり、突然の割り込みによりあわや接触になるそうな事態もありました。
そのような状況の中で、レースを安全かつ無事に完走できたのは、「直前の練習走行より入念な事前準備」「速く走る技術より抜かせる技術」「自分の走りに集中しすぎず広い視野を持つ」のレースアナリティクス活動の知見から得た“3つの意識”が要因だと考えます。
直前の練習走行より入念な事前準備
まず一つ目の「直前の練習走行より入念な事前準備」は、レーシングシミュレーターを使い事前にルール、コースそして走行ラインを予習しました。走行ラインはレースシミュレーターのソフトで表示されますので、そのラインを覚え、当日イメージしながら本番に挑みました。このような予習により他車の動きを見る余裕が生まれました。
速く走る技術より抜かせる技術
二つ目の「速く走る技術より抜かせる技術」は、速いクルマにいかに安全かつ先に追い抜いてもらうかの技術です。今回のような参戦ハードルの低いレースは、車両の性能、ドライバーの技術の差が非常に大きく、極端な速度差が生まれるため、接触の危険が高まります。その中で安全に完走するためには、抜いてもらう技術は速く走る技術以上に重要になります。速いクルマにはコースを譲る意思表示をし、抜いてもらいたいラインをしっかりと空けるようにします。このような譲る方法をとることで、差による危険を回避していきます。
自分の走りに集中しすぎず広い視野を持つ
最後は「自分の走りに集中しすぎず広い視野を持つ」です。レース中は経験不足と緊張のためどうしても視野が狭くなり、前方しか見なくなります。特にスピード領域が速くなればなるだけ、その視野はさらに狭くなります。その結果、周りの状況の把握が遅くなることで、クラッシュや衝突などに巻き込まれます。先の事前準備とつながりますが、心に余裕が持てれば、バックミラーやサイドミラーを見る余裕も生まれ、それによりいち早く前後左右の状況把握ができるようになります。その把握が相手の動きを予想し、それに対応したドライビングをすることができます。
3つの意識は日常のドライビングで役立つ
私たちが得たこの3つの意識は耐久レースにおいてとても役立ちました。実際にレースに出たことでこの意識が体に染みつき、日常のドライビングでも役に立っています。さらに、このレース経験がレースアナリティックスの開発に活きています。
さいごに
レースにスポンサーをする企業は多い中、社員が実際にレースを経験する機会を得ることはなかなかありません。グランバレイはこのように社員に新しい機会を提供する活動を長年行っており、社員一人ひとりの成長を大事にする会社です。参加したメンバーは今回の機会から新しい発見や知見を得ることができ、人生の階段を一段登ることができました。
次回は、来年冬に開催される7時間耐久レースへの参加を予定しています。メンバーを増やし新たなメンバーで「安心・安全」でゴールできるように日々鍛錬していきます。
過去のレース参戦記
2020年 シミュレーターも導入!新メンバーで挑む7時間耐久レース参戦記
2019年 今年も新メンバーで挑戦!本質を知るためのレース参戦記
2018年 レース分析を知るためのレース参戦記
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