厳しいビジネス環境で企業が生き残るために、データを活用する必要性があることは何度も語られてきました。
企業が気づいているかどうかはさて置き、業界、製品、サービスに関わらず、どの企業も活用できるデータを保持しています。そして、そのデータを活用するために、データ分析ツールが利用されていますが、有効に活用するためには、全てのビジネスにおいて、ビジネスを推進するためのBI(ビジネスインテリジェンス)戦略が必要です。
私は、グローバルチームのリーダーを務めるSisense社のBIコンサルタントとして数多くの経験をしました。その経験から「BI戦略が立てられたプロジェクトは、そうでないプロジェクトに比べ、成功する」と断言できます。
BI戦略とは、企業のパフォーマンスを測定し、競争優位性を発見、そしてデータマイニングと統計を活用してビジネスを成功に導くための設計書となります。全ての企業がデータを生成している現在、それらはどのように活用されているのか?今回の記事では、BI戦略を立てる時に考えるべき5つのステップを紹介します。
1. 現在地を知り、次のゴールを見つける
Sisense社がBI戦略に最適と考えるアナリティクスへのアプローチが下図のthe Evolution of Analytics chartです。ガートナー社のレポートを元にしたこちらのチャートには、BI戦略に必要な分析機能が載っています。Sisense社のAIチームは、Cognitive Analyics(右上)が次世代のアナリティクスの主流になると予測しています。
戦略を立てるうえで、将来の指針を知るため最初に行うことは、自分たちがこのチャートのどの段階にいるかを理解することです。多くの企業は、左下に位置するAnalytics(何が起こったのか)とDiagnostic Analytics(何故その原因と結果となったのか)の位置にいます。企業によっては、既に過去のデータを定型レポートとして出力し、さらにデータをドリルダウンして詳細を分析するなど、ある程度データの可視化ができているかもしれません。しかし、このチャートで示されているように、データでできることはまだまだ沢山あります。正しいBI戦略を持ってすれば、簡単に次のステップへと進むことができるでしょう。
2. 目標の設定
このステップでは、ビジネスのゴールを設定します。ゴールの設定に必要なデータは豊富にあるため、分析対象の指標を細かく定義しながらゴール設定を行うことで、より良いゴールにたどり着くことができるでしょう。ビジネス上の課題やニーズは様々なため、ゴール設定の際に使用するデータは、各々の課題やニーズに対応したデータである必要があります。
ビジネス上の課題やニーズの例
- ビジネスの効率化
- R&Dのボトルネックを見つける
- 顧客にナレッジを展開する
- ソリューションの付加価値を高める
そして、ビジネス上の課題に対応したデータを活用して、チャートの右上のPredictive Analytics(将来の何が起こるのか)、Prescriptive Analytics(どのようにしたら将来それが起こるのか)の領域まで達することができれば、以下のような質問に対する答えを導くことができます。
- 年度末までに目標を達成できるのか
- どの市場セグメントにフォーカスするか
- 過去の実績に基づいた製品の提案
- 取引を成立させる主な貢献者
- 市場にインパクトを与えるために、必要な要素や制約の最適な組み合わせ
右上のPredictive AnalyticsやPrescriptive Analyticsの領域で導き出される洞察は、左下のDescriptive Analytics、Diagnostic Analyticsとは違い、企業の成長にインパクトを与える主要な要因となり得ます。
私たちは顧客と仕事をするとき、財務データと販売データから取り掛かっています。これらのデータを理解することは、会社の成長に大きな影響を与える可能性があるからです。収益の伸びを例にとってみましょう。これを分析するためには、収益に関係する全ての売上データが必要になります。それらのデータはERPや、SalesforceなどのCRM等のシステムから取得することができます。
大企業において、端末から入力されるデータは、複雑に構成されたシステムへ連携されています。そのデータの中から、収益の伸びを分析するに足るデータかどうかを評価しています。繰り返しになりますが、分析対象の指標を細かく定義しながらゴール設定を行うことで、どのデータセットを使用すれば良いか定義するのに役立ちます。
また、ビジネスゴールの設定に使用するデータのうち、どのデータが足りていないかを把握してください。把握できていないと、predictive analyticsやその先のBI戦略の領域に進むことができません。
このステップの最終目的は、ビジネスゴールを達成するのに役立つKPIの設定と、そのKPIを視覚化して分析するために必要なデータソースを明確にすることです。
3. どのようにデータを共有するのか
データを共有する前に考えなければならないことは、どのようにソリューションを展開するのかです。これは当たり前のことのように感じますが、BI戦略の中で最も重要な位置付けになります。
企業が取りうる基本的なデータ共有の形を2つご紹介します。
分散型データ共有
一部の企業では、インタラクティブなダッシュボードでエンドユーザーを支援しています。このような取り組みによって、シチズンデータサイエンティストと呼ばれる人たちが活躍するようになりました。彼らは本当のデータサイエンティストのように高度な知識に基づく分析を行う必要はありません。データの活用方法を知るだけで、ダッシュボードに表示される以上のデータにアクセスするようになりました。
彼らはパワーユーザーとして検討すべき人たちで、部署に必要なものの定義や、意思決定を行うための洞察を必要としています。大企業の組織において、この分散型データを共有することは、ITチームとデータ分析チームとの垣根を取り払い、各部門がより多くのデータを自分たちで分析できるようになります。
集権型データ共有
一方でデータ共有の範囲(誰がどの情報をどの程度触れることができるのか)を完全にコントロールしている組織もあります。例として、ナスダック社のBI戦略は、機密データや巨大な配信チャンネル、そしてより良いガバナンスを考慮して作られました。この戦略に基づいて、顧客にダッシュボードを提供しておりますが、データモデルを直接操作できる機能は盛り込んでいません。ある程度ドリルダウンを行うことができ、詳細な情報を見ることができますが、データはシステムやオブジェクト、データ単位でセキュリティが設定され、厳格なデータガバナンスを有したダッシュボードを展開しています。
ソリューションを製品に組み込む場合は、どこにどうやって組み込むか、非常に多くのユーザーへ展開する場合のスケーリング方法、 開発から製品に移行するプロセスや、プロセスの中でコードを凍結するかどうかを議論する必要があります。
また、BIソリューションが会社や顧客にどのように伝えられるかや、組織でのBI採用をサポートする方法も考慮しましょう。 オプションには、電子メール、会議、PR、トレーニング、実稼働化、さらにはドキュメントが含まれます。チームメンバー、ステークホルダー、マネジメント層と全てのシナリオを検討する時間を作りましょう。
4. ソリューションを提供する
BI戦略は、エンドユーザーまたは会社全体にどのようにBIソリューションを提供するか考えるべきです。特にデータの共有方法により作業内容に相違がでる場合があるからです。たとえば、集権型のソリューション(ユーザーが調整する余地がない)の場合は、トレーニングとドキュメントにより多くの労力をかける必要があります。分散型ソリューションの場合は、短いリリースサイクルを実行して、各々のリリースに関するフィードバックを取り込み、次のリリースで展開する必要があります。
ソリューションの提供方法の概要をBI戦略の中で示すことで、取り組むべき作業にフォーカスした計画を立ててください。
5. 障害を発見する
これまでのステップで、ステークホルダーに対してヒアリングすることで、どのようなデータが必要なのかが明確になりました。
次は、このBI戦略で誰がゲートキーパーなのかを調査する必要があります。ここで言うゲートキーパーとは、データとBI戦略の当事者間で、ボトルネックになっている人またはものを指します。
データはデータベースに保存することも、サードパーティベンダーに保存することもできます。例えば、雇用パイプラインを管理している会社に人事サービスをアウトソーシングしている場合、またはマーケティングキャンペーンを管理するMarketoや金融サービスのQuickbooksのようなクラウドベースのサービスプロバイダーを利用している場合、データを適切に使用するために、接続方法を確認し、その構造を理解する必要があります。
一部のサードパーティアプリケーションには、データのインポートに利用できるAPIを提供するケースもあります。IT部門の場合、管理者の許可だけで、データにアクセスできるかもしれません。BI戦略内で、外部のサービスや、社内の管理者とやりとりをするためには、事前に時間とリソースを割り当てておく必要があります。特に、戦略を実行する人員の不足が障害となる可能性があるため。初回リリース時だけでなく、将来の変更要望や機能強化に備え、事前に綿密な人員計画を策定することを忘れないでください。
ビッグに、データを活用する
私たちはデータとBI戦略によりビジネスが変わることを強く信じています。 最初のダッシュボードで、全てのピースが収まるべきところに収まり、顧客に「なるほど!」と感じさせる。私たちは、こうしたビジネスの形ががらっと変わる瞬間に、共に立ち会うことができるBIコンサルタントという仕事に誇りを持っています。
今後、業界、製品、またはサービスに関係なく、全てのビジネスにおいてデジタルトランスフォーメーション(DX)が必要になります。その時、ビジネスを成長させるためにもBI戦略の策定が欠かせないでしょう。
この投稿に記載されているすべてのデータは情報提供のみを目的としており、正確ではありません。前もってご了承ください。
本記事は、Sisense社の許諾のもと弊社独自で記事化しました。
https://www.sisense.com/blog/five-steps-for-building-a-successful-bi-strategy/
※ SisenseおよびSisense Hunchは、Sisense Inc の商標または登録商標です。
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